庄原 アベマキ、シラカシ、ナラガシワ…

2025年11月12日

広島県北東に位置する庄原市。平成の大合併以降近畿以西では面積最大の自治体で、森林は実に1,000平方km以上。古来、平地では農耕、山地ではたたら製鉄が行なわれ、萌芽更新由来の里山広葉樹二次林が広がっています。と一言でいっても、日本海に注ぐ江の川と瀬戸内海に向かう高梁川の両流域を含む市域は広く、標高(150~1,270m)や立地で多様な森がみられます。

旧7市町を3日間ゆっくり回ってみました。 

標高が高い比婆山(西城町)は別記事に。

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釜峰山 口羽町

まずは庄原市中心部から北東に直線距離で10kmほどの口和町。

湯木地区伊予谷。標高450m。かつてたたら製鉄が行なわれたことを示す金屋子神社。

ここは国有林の「釜ケ峰アベマキ・アカマツ遺伝資源希少個体群保護林」に指定されています。「森林浴公園」として歩道が整備されていました。

入口付近。さっそくアベマキが優占する林相。

黄葉がはじまりかけ。

この林分の成立過程は、最近の研究で考察されています。かつてたたら製鉄のために利用されていた薪炭林、現在の林冠木は1880年前後の伐採から萌芽更新起源(150年生ほど)と推察されるのだそうです。アベマキの更新成績が良好だったようで、1930ー40年代に試験地に設定され間伐が行なわれたようです。その後、混交していたアカマツがマツ枯れの影響で消失し、現在みられるアベマキ優占林が成立した旨。

直径80cm、樹高30mを超える個体も。 140年生時点で蓄積は300立方m近いとのこと。間伐によってすばらしい林相になったとみることができそうです。

樹皮。かつては国産唯一のコルク資源に位置付けられ、この地域の国有林では「官行剥皮」が行なわれたとのこと。上記、戦前の間伐時にはコルク層の発達がよいものが残されたのだそうです。

しかし、ここにもナラ枯れの影響。幹のビニール被覆による防除が行なわれていました。少々痛々しい感じがしますが、重要な森林を守る手段としてやむを得ません。。

実際、大径木のナラ枯れが一部で見られました。最近の報告では、この林分ではアベマキよりコナラの被害率が高い傾向であったとのこと。

コナラ、クリ。

シラカシも見られました。

保護林の中を登っていきます。下層はそれなりに発達した個所もありましたが、アベマキの若木はほぼ見当たりませんでした。

アベマキの堅果。多くは見られませんでした。

ホオノキ、コシアブラ。

アワブキ。

ヤマザクラ。

ウワミズザクラ。

アズキナシ。

ケヤキ。

ブナ。

ノグルミ。

ミズメ。

イヌシデ。

アカシデ。

ヤマモミジ。

ウリハダカエデ。

ウリカエデ、カジカエデ、イタヤカエデ。

クマノミズキ。

アオハダ。

途中から保護林域を出ると、スギ人工林。

アカメガシワ、カラスザンショウ。

ヤマウルシ。

ヌルデ。

クサギ、タラノキ。

ミツバアケビ。

林床はチュウゴクザサ(チマキザサ節)。

1時間ほどで標高650mの釜峰山城址展望台に到着。

自然の地形を利用した戦国時代の山城であったとの説明。山頂に向かう方向、狭い尾根道を横断して掘り下げた防御施設「七条の堀切」。他では見られない堀なのだそう。

山頂付近は美しいアカマツ林でした。アベマキの保護林内のアカマツはマツ枯(マツ材線虫病 )で消失したとのことでしたが、ここは残っています。乾燥地で育ったアカマツ個体は耐乾性を獲得しているため被害を受けにくい、とする仮説が示されています。

山頂付近のブナ。

紅葉をたのしみながら下山。

クロモジ。

アブラチャン、ヤマコウバシ。

ダンコウバイ。

イヌガヤ、ユズリハ。

ヤマグワ。

ツノハシバミ。

サンショウ、ミツバウツギ。

コアジサイ、ウグイスカズラ。

リョウブ。

コバノミツバツツジ、スノキ。

ネジキ。

アセビ。

アオキ。

ソヨゴ、イヌツゲ。

ガマズミ。

ムラサキシキブ。

ミツマタ。登山口付近に多く見られました。

2時間ほどの散策でした。去りがたい風情のアベマキの森。

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口羽町

里に下って振り返った釜峰山。

湯木八幡神社

湯木地区にある八幡神社に立ち寄りました。

社叢が見事。

スギ。

シラカシ。

ウラジロガシ。

里の景色。クリ、

八幡神社から北に1kmほど「湯木のモミ」。胸高直径1.9m、樹高32mというモミとしては屈指の大径木。枝の落下の危険があって残念ながら近寄ることはできませんでした。

多加意加美神社

町の中心に位置する式内社。「龗(おかみ)」は水・雨を司る神だそう。ここにも立派な社叢。

モミ、スギ。これらも直径1.5m以上。

シラカシ。

堅果が豊作でした。

ケヤキ。

町の景色。

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比和町

中国山地にむかう比和町。

三河内(みつがいち)の棚田。すてきな展望台。

この地区はかつて数百年にわたって山を切り崩し、鉄穴(かんな)流しと呼ばれる方法で砂鉄を採取していたそうです。棚田の地形はその遺構。削り残された地形(残丘)も見られました。

慶雲寺

この集落の慶雲寺。シラカシ林が残されています。

斜面がまとまった林分になっていました。直径1m近い大径木も。シラカシの分布は標高400m以下の暖温帯域で一般的とのことですが、ここ三河内は標高580mと県内の北限なのだそう。

ここでも堅果が豊作。

ヤマモミジ。

民家のカキノキ。その奥に森を振り返りました。

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高野町

比和町から小さい峠を越えて島根県境がある高野町。

上湯川八幡神社

比和町との境界近く、上湯川地区にある八幡神社にも見事な社叢。

モミ、スギ。大径木が多数。最大胸高直径は2.2m、最大樹高は36m。

ミズキ。

大宮八幡宮

高野町の中心部に近い大宮八幡宮。スギの参道。

切株。2006年の台風で並木の三分の一が風倒してしまったとのこと。胸高周囲が4mを超えるアベマキが生育しているとの情報があったのですが、見当たらなかったのはその影響かもしれません。

境内にはモミの大径木。

イロハモミジ。

ミズメ。

さらに町の中心。 円正寺のシダレザクラ。

路地裏にある金屋子神社のシナノキ。萌芽で株が代替わりして大径化した樹形。この地域では「カネル」の木と呼ばれ繊維が農耕用などに利用されていたそうです。

名産のリンゴ。

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総領町

翌朝は庄原中心の南側、旧総領町から。シラカシの大径木があるという領家八幡神社の社叢。森には立ち入れなかったので遠望。

上市のイロハモミジ。説明によれば、200年余前の江戸時代後期、京都から持ち帰って植えられたとのこと。

直径1mを超える大径木も。

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庄原市高門町

諏訪神社

集落の中に、浮島のような森。ここが素晴らしい森でした。

低い丘に鎮座する諏訪神社。周囲が農地となり、境内だけが森として残されています。標高は380m、面積は0.5ヘクタールほど。

シラカシの純林になっていました。看板によれば直径25cm以上のシラカシが37本を数えるそうです。

中国地方内陸部を代表するシラカシ林と言える存在だそうです。

社殿の周囲は定期的に落葉落枝が清掃されて、美しいコケ林床になっていました。50種を超えるコケが見られるとのこと。

晴天の朝、清々しい時間を過ごしました。

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帝釈峡 東城町

ずっと東に移動して高梁川水系の東城町へ。

標高500mほど、この地域に広がる石灰岩台地が帝釈川によって深く浸食された名勝「帝釈峡」。その地名は、古くから帝釈天が祀られていたことによるのだそうです。

峡谷に沿った歩道を散策。紅葉シーズンで大勢が訪れていました。

目だったのはケヤキ。

大径木が見事でした。

エノキ。

ナラガシワ。

ヤマモミジ、コハウチワカエデ。

ひときわ鮮やかだったメグスリノキの大径木。

ミツデカエデ。

チドリノキ。

イタヤカエデ。

こちらは葉の切れ込みが浅い変種タイシャクイタヤ。分布は帝釈峡周辺の石灰岩地に限定的とのこと。

サワシバ。

巨大な石灰岩の天然橋「雄橋」。もう少し歩きたい気分でしたが、ここで通行止め。

イヌエンジュ? 文献によるとこの地域で見られるものを変種ハネミイヌエンジュと扱う分類も。

カナクギノキ、アブラチャン。

ミツバウツギ、ガマズミ。

帰り道も景色を堪能。

駐車場近くの道路わきに「大元のボダイジュ」の看板。

直径50cmほどのこの木はマンシュウボダイジュだそうです。中国東北部・朝鮮半島・ロシア極東に分布し、日本では中国地方の石灰岩地に見られます。冷涼な気候で、大陸的な遺存種となったのでしょうか。

峡谷沿いにあったこちらはチュウゴクボダイジュ? 果実は見当たらず、生葉にも手が届かないので分類は難しめ。

短い散策でしたが、多くの固有種に出会えた印象

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帝釈峡でもう一か所。峡谷から比高100mほど上(標高480m)のカルスト台地上。石灰岩の露頭。

休暇村の敷地内に歩道が整備されていました。平坦で歩きやすい径。

よく発達した二次林。「くぬぎの森」と呼称されていました。直径は30-50cm、通直な樹高は20m以上に達する気持ちよい森でした。

クヌギ。

ただ、歩いた場所での優占種はむしろコナラ。

そしてナラガシワも多数。本州ー九州に自生しており、沖積低地に多いとの報告がありますが、ここで優占しているのは少々意外にも感じました。

アベマキも。落葉コナラ属が4種見られて、多様。

クリ。

おそらく二次林の発達初期には多かったであろうアカマツ。

カヤ。

イヌシデも優占種。

サワシバ。

ヤマモミジ。

コハウチワカエデ、ヒトツバカエデ。

タイシャクイタヤ、イタヤカエデ。前者はここにはあまり多くなかった印象。

チュウゴクボダイジュ。

ミズキ、ヤマボウシ。

アオハダ、コシアブラ。

シラキ、アカメガシワ。

色づきをたのしみながら。

クロモジ。

ヤマコウバシ。

ダンコウバイ。

マユミ、サワダツ。

ウリノキ、ツルアジサイ。

リョウブ。

ネジキ、ナツハゼ。

アセビ。

イヌツゲ。

ムラサキシキブ。

ガマズミ。

ずっと平坦地を歩いていましたが、最後、段丘の縁辺部へ、タイシャクイタヤとメグスリノキの看板。

絶壁の下に帝釈川(ダム湖になってる)。上の2樹種はこの急斜面にも多いのかもしれません。

メグスリノキがありました

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東城町

板井谷のコナラとよばれる巨木。たたら場の防火の神である愛宕神社の神木として長く保全されたよう。ただ、ナラ枯れの影響か、葉がなくなっていました。。

東城町には、コナラでは全国最大サイズと思われる「帝釈始終のコナラ」(直径2.4m)が知られていますが、立ち入りできませんでした。また上記と同じ板井谷にあるカツラもアクセスできず、それらしい方向を遠望するにとどまりました。

白髭神社

森地区にある白髭神社。

スギ。直径1m超えが多数。

モミ、アカマツ。

ケヤキ。

ムクノキ。

エノキ。

里山、社叢、あちこち滋味深い紅葉・黄葉をたのしみました。

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